Book seris #8: 疲れすぎて眠れぬ夜のために


タイトルだけ見ると、鬱っぽいのかとか調子落ちてるのかとか心配されそうですが、割と元気です。

実は現在3つのプロジェクトを並行していたのですが、うち1つは新規プロジェクト開発的なもので、まだ私の専門外の段階だし(ある程度進めば、私の専門も必要になってきそうなのですが、今はまだ方向性を固める段階)、ボスに「ちょっとこんな先が見通せないプロジェクトをやりながら締め切りのある大きなプロジェクトやるの無理なんで、こっちお休みさせてください」と勇気を持って言ったら案外あっさり「だよねー 僕からも言っとくわ」って言ってもらえたので笑 自分のやることに集中できそうです。しかし集中しても迫り来る締め切りがすごい。。


ま、そんなんで年末に日本に一時帰国していた時に買い占めた本のうちの一冊です。確か、ポップに面白い事が書いてあって、買ったんじゃなかったかな?そんな感じで本選びは一期一会だと思っているのであまり何も考えずに買っています。でもこんなタイトルに惹かれたのはやっぱり疲れていたからなのか笑


で、内容ですが。夜寝る前に日本語の本を読むのですが、タイトルからして夜にぴったりそうな、ほんわかした、1日の疲れを癒してくれるような本かと思ったら全然裏切られたww 一言でまとめると「現代社会が疲れる理由の分析・作者の考える解決方法」って感じでした。常にドライで客観的な視点から「ほんとうの自分」「個性の過剰認識」的な思考の弱点や、何かとアメリカをグローバルスタンダードだと考えてしまう危険性、「○○らしさ」と社会的な制限の重要性、家族を愛するという事、アイデンティティのフィクション性なんかを各章で語っています。面白くないですか?


各章毎に考えさせられる内容で、まとめるのが難しいのですが、本を読んだ感想は、いかに私が、そして人類が「物語好き」なのかという事です。


私たちはメディアの作り上げた「本当の自分を探す」という人生のストーリーが大好きです。年を重ね、苦労を乗り越え、いろんな経験を積んでいけば「より自分らしくなれる」という幻想はとても魅力的です。そしてうまくいかないと「私は自分らしさがない、つまらない人間だ」と落ち込みがちです。でも本来、人間の精神的な成長は時間と正比例しません。その時々で、現状が変わってくるし、関わる人間が違えば、現実の見え方すら変わって見えるのが人間なんです。その驚異的な変化への対応能力こそが、人類の存続を支えてきたわけで。作者は「自分らしさという概念そのものがフィクションだから、その概念に固執しても「本当の自分」なんか見つからない」という論点で展開しています。


確かに、昔は良くも悪くも「個」の力が弱かった。女性は女性らしさを、男性は男性らしさを求められ、子供は子供らしく、老人は老人らしくする事で社会にそれぞれの居場所が確保され、お互いの居場所を取り合うような縄張り争いはなかった。現代社会が疲れやすいのは、本来ならしなくていい縄張り争いを常にしなければいけない、じゃないと「本当の自分」が見つからないと私たちが信じてしまっているから、と作者はいうわけです。まぁ納得いくといえばいく。


私は、作者の考えには概ね賛成です。確かに疲れやすい理由っていうのは、そこにあると思う。本来の生存本能以外の事をやろうとするから、しかもそうしないと「自己がない」とバカにされたり、蔑まれたりするのが怖いばかりに、日々縄張り争いに出かけようとするから疲れるんだ、と。


でも、私は戦いたい人は戦えば良いと思う。社会的な役割分担がはっきりしていた時代はもう終わってしまって、それは如何しようも無い事実なんです。だから、戦う気力と周囲のサポートがある人は、どんどん戦っていけばいいと思う。でもそれを「本当の自分」を見つける為のストーリーにすり替えてしまうとしんどくなる。自分以上の存在の為、例えば日本人女性のため、世界の子どもたちのため、あるいは中野区の納税者の皆さんのため、自分の学校のクラスメイトのため、とか。自分よりも大きい社会の単位の為に戦うのでなければ、仲間も出来ないし、一人で戦うのはしんどい。そしてその時に必要な武器は作者のいうとおり「本当の自分」ではないと思うんです。


死ぬ時に人生を振り返られるとしたら「ああ自分は「本当の自分」を見つけられたから本望だ」と思う人はほとんどいないと思う。「少しでも社会(どんな単位でも良い。最小単位=家族でも、全人類、全生物でも)に役立てた。」と思えた方が気持ちよく死ねるんじゃないかなと思うんです。


って、こんな事考えだしたら全然寝れないじゃん笑


こんな感じの、タイトルをいい意味で裏切る本でした。しばらく時間をおいてまた読みたいと思う本です。次回は、今読んでいるカラマーゾフの妹か、樹木希林さんの名言集の感想を書こうかな。

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