Beam time experiment

一応、大学院生なのでそれらしい記事もたまには書こうかなと笑


先週は木曜日から月曜にかけて、Beam time experimentをやってきました。前回のBeam timeは3:00-11:00というシフトを3日間やったのですが、今回2:00-14:00のシフトが4日間!8時間も12時間も大差ないだろうと思っていたのですが12時間シフトは長い…。病院勤務の方や激務なサラリーマンなど、こんなの日常なのかな…?だとしたら凄すぎる。


このBeam time experimentっていうのは、レーザービームのBeamなのですが、私のやっている物理化学という分野、私の研究分野では主に、光によって起こる化学反応を調べています。光を当てると色が変わるインクや、もっと身近な所でいうと私達が日焼けするメカニズムとか、光によって起こる化学反応って思っているよりもたくさんあるのです。


で、さらに私のチームはダイナミクス=分子が変化する過程を見ようとしている人達です。長い化学の歴史の中で、AとBを混ぜるとCが出来る!という謎を解くのはすごく上手くなった化学者ですが、実際にその過程を、リアルタイムで見るには二つの要素が必要です。


1)変化を見る目印となるもの。実際の実権でこれを計測する事で、変化を追っていく事が出来るわけですね。分子のカタチそのものを見る実験もあるし、分子の運動量、エネルギー、光吸収率など、色んな項目を見る事が出来ますが、何かひとつ絞ります。


2)時間軸。変化の速さが分からない事には、変化を追いかけていけません。最新のテクノロジーでは、10億分の1(ナノ秒)、1000兆分の1(フェムト秒)、100京分の1(アト秒)という想像もつかない単位で変化を追う事が出来るのです!!! ちなみに気体の化学物質は、だいたいフェムト秒からナノ秒ぐらいのスケールで変化が起こります。


なので、ざっくり説明すると:


被写体=動く分子ちゃんたち

カメラ=レーザービーム


これらを使って、パラパラ漫画のように連写した画像をつなげて動画にする!という研究です。だいぶざっくりですが笑 


で、もちろん、ここ20年でレーザー技術はめちゃ発達したので、今では研究室でもフェムト秒レベルのレーザーが業者から買えるほどにまでなりましたが、それでも超特殊スペックなレーザー光線は、世界中にちょこっとしかない研究機関でしか使えません。実は日本にも、世界で10数個しかないレベルの超高スペックレーザー、SACLAが播磨にあります。しかし、こういう超特殊スペックが必要な実験もあるわけで、そういう実験をしたい人は企画書を提出、通ったらbeam timeといって1回3-7日程度、そのレーザーを使う事が出来ます。もちろん、実際のレーザーの操作は、ベテランのスタッフが行う(私達は立ち入りすら許可されてないかも笑)のですが、実験のプラン実行や指示出しは企画書を出した本人とそのチームが行います。私はデータ解析チームとして参加しました!


データ解析チームの役割は、実験中にリアルタイムでデータを確認、グラフ等に可視化し、みんなにシェアして、教授たちが「それならこのコンディションでもう1回やってみよう」とか「これは没。次はこの部分を変えてみよう」といった指示を出すサポートをする大事な役割です。


こういうタイプの実験は、当然、費用もかなりするので(1時間何千ドルとか)まさに1分も無駄に出来ない!普段はわりとのんびりした教授でも、ピリピリします。すごい予算使って5日間データ取っても使い物にならないって事だってあるので。なのでデータ解析チームのスピード感はとっても重要です。


なのですが。


今回、慣れないプログラミング言語(普段のメインはMATLABですが今回はPythonでした)と、慣れない施設側のデータシステムと相まって3日間…全く役に立った気がしない。同じシフトには5-6人のデータチームがスタンバっていたのですが、1-2名のポスドク(院生ではなく、博士号を持っているのですが、研究職に就く前の段階。博士号用の有給インターンみたいな)に完全に頼りっきりになってしまいました。私だけではなかったとはいえ、せっかく参加したのだからちょっとぐらい役立ちたかった…。ポスドクの知識にかなわなかったとしても、プログラミングが遅かったとしても、せめてもうちょっと事前準備しておくべきだったなと反省。


でも学びは多かったです。データ解析チームとは別に、世界各国のコラボレーターたちがディスカッションチームに参加していて(実験施設はイタリア、教授陣はベルギー、ドイツ、イギリス、フランス、アメリカ、と色んなアクセントが飛び交うディスカッションでした)、普段私が読んでいる論文を書いてるご本人が画面越しにいたりして、こんなスター達と曲がりなりにも一緒に仕事出来てるんだから、もっと結果出さなきゃと思いました。


12月に、こんどはうちのラボ主催でBeam time experimentがあるので(今回のは助っ人でした。全然助っ人になれなかったけど苦笑)、それまでにしっかり準備しておこうと思います!


Have a great week! 

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