現代社会はフィードバックや”結果"で溢れています。
ワンクリックで保険の見積もりから、大好きな人へのメールまで出来てしまう。
そんな中、アートって本当に面倒くさいと思う。
やりたい事をイメージして、絵の具を混ぜたりキャンバスを用意したり、音符を書き付けたり、振付を想像してみたり、スケッチしたり。
インスピレーションから作品が出来るまでの課程がかなり面倒くさい。
インスピレーションを形に出来るようになるまでだって、何年も、何十年もかかる作業。
しかも、その間にその他の人生はどんどん進んで行って。
別に作品の完成を待ってくれる訳でもない。
完成しても受け入れられるとは限らない。
なんというか。。。。効率悪い。
でもなぜ。なぜアーティストという職業はなくならないのだろう。
それはやっぱり、何か新しいものをつくるって限りなくめんどくさい仕事だから。
でもそうじゃないと掴めない感情とか、思想がある。
物理の色んな大事な事を立証したMax PlanckがPlanck's distanceと名付けた距離があります。2つの物体の距離をどんどんどんどん縮めて、一般的な物理学の法則が成立しなくなり、代わりに量子力学の法則が成立するようになる距離。
光速、引力、Planck’s constantの3つの要素からはじきだされる数字: 1.616 x 10^-35 m.
ものすごーーーーく小さい距離です。分子レベルの物事にしか通用しない理論。
普通に生きる分には全く関係ない数字。見えないし感じれない。でもそこにある。
その誤差。隙間。どんな精密な機械でも計れない(no meaningful measurement)。
バーコードの0と1の間の、その間の、その間の、その間の…..間にある小さい小さい誤差。
それをうまーーーく掬い取ってくれるのがアートなんじゃないかなと思う。
割り切れない気持ちとか、モヤモヤした感触をひゅっと掬いとってくれるもの。
絵画の筆遣い、音楽の間、シャッターを切る瞬間、言葉のリズム...に隠れているもの。
不思議と、そういう風に掬い取ってくれるものに触れると私たちは安心します。
あ、1人じゃない。あ、誰かもこの誤差、違和感を感じてる。抽象的なんかじゃない。
それは私が今パソコンに向かって文章を書いているという事実と同じぐらいリアル。
だからこそ、どんなに効率が悪くても、どんなに世界が不景気になっても、アートはどこかで生き残り続けるし、私の中で良いアーティストって、まだ誰も掬い取った事のない誤差や隙間を掬い取れる人の事。そんな作品に出会った時、私たちはめちゃめちゃドキドキする。
このご時世でなくとも、アーティストでいるのは至難の業だった。
秒速フィードバックを求められる現代では、もっともっとそうだと思う。
だから、アートで生きて行こうとしている人には本当に拍手を送りたい。
そして私は、過去に色んな人が苦労して作り上げた作品を大切に手入れして、未来の人とシェア出来るような、そんな仕事がしたいと思う。
Lab 2107
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