Book series #4

日本でたくさん買った日本語の本ーーーー♪

小さい頃から読書が大好きで、読むスピードも結構早いのです。

そして好きな本は何度も何度も何度も読み返すのが好き 笑 

1年ぐらい経つと読んで気になる文章とかって全然違うし、感じ方も違うし。

大好きな本はなんだか昔から私を知っている友達のような感覚。

その本にハマった時期の自分を、写真と同等、あるいはそれ以上に鮮明に思い出させてくれる。


昨日読み終わった楽園のカンヴァス(作: 原田マハ)にもそんな記述があって驚きました。

小さい頃から絵が好きだった、早川織絵は絵を「友達」、美術館を「友達の家」と思っていた。

これって美術館が身近かつ裕福な家に育たないとならない感覚ですよねw

この主人公は大手商社マンの父+幼少期をNYで育った設定なので、まぁ納得といや納得なんですが。

私には絵画を「友達」という感覚はないけれど、美術館=友達の家っていうのは凄く分かるw

いつ行っても、何時間いても、フラッと立ち寄るだけでも、全部ウェルカムな感じ。

そういう意味でNYで学生時代を過ごせたのは本当に本当にラッキーでした。

学生証でMoMAとMet、他にもたくさんの美術館にタダで入れるので、朝から予定に組み込まなくても

「待ち合わせ早めに着いちゃったからあのお気に入りだけ見に行こう」「今日は1人でずーっと居座ろう」とかw

NYに来るまで美術館なんてまーったく興味なかったのですが、いつからか人の家に図々しく上がり込む近所の子供みたいになってました笑 

The Sleeping Gypsy (1897), Henri Rousseau, MoMA


この本の軸となる画家、アンリ・ルソーは初めてMoMAに行った時にすっごく気になった絵でした。

シャープすぎな輪郭といい、不自然な人間のポーズ・比率といい、リアリティには欠ける作品。

なのに満月の明るさと夜の冷たさが肌に感じられるし、

昼間の温かさを残した足下の砂の小さなサラサラする音が聞こえそうだし、

ジプシーを襲う気なんか全くなさそうなライオンの好奇心まで見え隠れしていて。

ライオンはたった今、私の存在に気付いたかのようにしっぽをピンと立てて目を見開いている。

その時はこの変なリアルな感覚は面白い、ぐらいにしか思わなかったのです。

あえて抽象的に描いてるとも思えないし、むしろ頑張ったけど変な構成になっちゃった感というか。

そのわりには視覚以外の五感にめちゃめちゃ訴えかけてくる。

この絵に特にメッセージやモラルは感じられず、ただ一瞬でこの砂漠に連れて行かれちゃった。

The Dream (1910), Henri Rousseau, MoMA


そしてタイトル画にもなっているこれ。晩年に描かれた2m x 3mの大作。

この絵の前からしばらく動けなかったのを覚えています。

The Sleeping Gypsyと違う階にあったのですが、作家が同じなのを見て「私この人の絵好きなんだな」とにやつきました笑

近寄ったり、離れたりしながら、10分ぐらい眺めてたんじゃないかな?

鬱蒼としたジャングル。シンガポールの熱帯雨林を思い出させる濃い緑と湿度の高い空気。

まずそれがガツンと感覚としてやってきて、だんだんジャングルの音が聞こえてくる...

サルなのか鳥なのかなんだか分からない生き物の鳴き声、風がないのに草木がそよぐ音。

もわっとした空気の中に、南国特有の甘い花の香り。甘すぎてうざいぐらい。汗がじんわり。

月だけが遠くの方に明るく、冷たく光っていて。

そこで初めてこの場違いな長椅子に座った女性に気付く。彼女は何をしているの?

ライオンが2匹。一匹は彼女を見据えていて、もう一匹は私を真っ正面に捉えている。

弓なりの背中は今から飛び出すため?それとももっと距離を縮めて一発で殺るため?


こんなに強烈な印象を残した絵だったのに、美術史の授業ではあっさりと習って拍子抜けだった。

「ルソーは40歳で突然、税関吏の仕事を辞めて画家になりました。それまでは日曜画家、などと言われて全く評価されず、サロン落選作品ばかり集めた落選展ですら、マティスやピカソの作品の隣で馬鹿にされる程でした。新しい芸術のあり方を探していた若い新鋭の芸術家達からも、ルソーを尊敬するものはごく一部でした。晩年に描き上げた「夢」が有名な作品です」以上。


それ以来ご無沙汰なルソーでしたがこの本を通して新しく見られそうです(やっとブックレビュー笑)

彼と「夢」のモデルになったヤドヴィカという女性の関係。

彼の幼稚なほどに純粋な「描きたい」という衝動。

生前から彼を評価していた少数派の1人、ピカソとの関係。

新しいアートをヨーロッパ中のアーティスト達が試行錯誤して模索していた時代背景。


正直、この作家の書き方とか、物語の設定とかはだいぶ無理があると思うし、主人公に共感出来る所も特にないし、主人公自体大して魅力的な人物な訳でもなく、プロットも個人的には盛りだくさん過ぎてすぐにお腹いっぱいになっちゃった本です。


ただ、ルソーのこんな側面を2人のルソーを愛してやまないキュレーターの目を通して物語にしてくれたという意味で、この本に出会えて良かったなと思います。そしてアートって人の人生を変えてしまうような底力があるんだなという再確認が出来ました。


彼の死後まで、彼の作品はまったく評価されなかったし、同時代のスーパースター達が凄すぎて。

(だってマティス、モネ、ピカソ、ゴーギャン...美術に興味がない人でも知ってる名前がこの時代に何人も登場し活躍しているのです。ピカソが若い頃、ルソーはもう余命の短かく、超貧乏な男やもめだったんです。勝ち目ないでしょ?)

アンリ・ルソーを知らなかった人がこの本を通して興味をもってくれれば嬉しいです (:




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