Book series #11: マチネの終わりに

今日は日本で買った本の読書感想文。


普段は本屋やブックオフにふらーっと寄って適当に気になったものを買うのですが、今回の本は不思議な出会いで、どのポッドキャストか思い出せないけど、とにかく何かのポッドキャストで、作者の平野啓一郎さんがインタビューされていて、その時に「今書いてる作品はー」って感じで喋ってた気がするんだけど違ったかな?とにかく聞き覚えのある作品で。先月、一時帰国している間にちょうど映画が公開されたらしく「あの本映画になってたんだ!」となり、帰りの空港で思わず手にとってしまった一冊です。友達も読んでたし。


関係ないですけど、空港で買う本ってなんか好きです。じっくり選ぶわけじゃないし「この本欲しい」って思って買いに行くわけじゃないけど、なんとなくフライトで映画を見飽きてしまたった時にみたいなぁ(結局、Game of Thronesのファイナルシーズンを見たり、アラジン、ライオンキングなど、もろにこれ見て育ったよ!のディズニーの実写版を見たりして読まなかったのですが笑)みたいな本。以前、そんな感じで適当に手にとった村上春樹の「スプートニクの恋人」が予想外に気に入った(相変わらず冷やしたビールとかやたら美味しそうな白身魚の料理とかが出てくる笑)ので、そのせいもあるかな。読書は寝る前と移動中が好きです。

で。本題。以下ネタバレあるかも。


映画の宣伝のせいで、福山雅治と石田ゆり子がチラついたのが気になったけど笑 私が彼らの年齢(40歳前後)になったらもう一度読んでみたい作品かなと思います。なんだろう。読み進めるのは全く苦にならないんだけど、そこまでのめり込めなかった。


とりあえずは主人公達がキラキラしすぎてるのかもなぁ。薪野は天才クラシカルギタリストで、幼い頃から突出した才能、ルックス、快活で偉ぶらない人柄と全て揃った感じ。ヒロイン洋子はもっとキラキラで、容姿端麗、頭脳明晰、治安の悪いバグダットに単身飛び込んでいく行動力もあれば、アートや音楽に造詣の深い一面も。


出会った時、薪野はモテる独身、洋子は婚約中で2つ年上という設定。まぁ薪野の方はパリまで洋子を追いかけていって婚約破棄してくれと頼み込むんですが、なんだろう。男の人がこれやるとロマンチックとか情熱的な感じに取られる(私も少なからずそう思っちゃう方)けど、これ女性がやったらだいぶ重いと思われるよね。やらないけど笑 まぁ洋子の方は色々考えたあげく、婚約破棄しようとするわけです。でも婚約者は簡単には引き下がらない。まぁ年齢も年齢だし、大学時代から狙ってた洋子をぽっと出てきたアーティストの薪野なんかに取られたくないわけです。で、まぁ色々紆余曲折あり、薪野は人生初めてのスランプの真っ只中、洋子はバグダット時代のPTSDに苦しむなど、それぞれに未解決の問題が二人の恋を邪魔したあげく、決定的な外的要因によって二人は別れてしまいます。傷心の洋子はまだ破棄出来てなかった婚約者の元へ。結婚、そして出産。


でね、洋子がこの婚約者のプロポーズにそもそもイェスって言った理由的なものが漠然と「子供欲しい」みたいな事が書いてあるんですけど、それでイェスって言えちゃうの?!って所が私はなんとなく引っかかっちゃうわけです。え?子供欲しいタイミングで求婚されたらオッケーになっちゃうの?この人と20年近く子育て出来るって思えないとイェスって言えなくない?婚約の段階で既にモヤモヤ感溢れてるじゃん!みたいな。それともこういう事って案外部外者には明らかだけど当の本人には分からない事なのかなぁとか思ったり。


結局、洋子と夫は正義感?的な、結構致命的な部分で食い違いがあり(洋子は資本主義に懐疑的で、夫は経済学者であり、資本主義のゲームにのっとって人生を歩んでる)、夫にとって洋子は自分の研究が、世の中のミリオネアをビリオネアにする為に、資本主義をさらに繁栄させる原因になっているという、後ろめたい事実を思い起こさせる罪悪感トリガー的な存在になっていく。そんな洋子から逃げるように、資本主義の営利を悪びれる事なく享受する美女と浮気、洋子に離婚を求めます。洋子はそれを承諾。新たなキャリアに身を投じます。


ね?モラルの基準とか、結構致命的な意見の相違なんて、昔から分かってたことじゃないの?婚約する前に分かったんじゃないの?それほどまでに子供ってほしいものなの?と、26歳の私は思うわけです。もちろん、いつかは欲しいなとぼんやり思うけど、それよりも「この人となら一緒に子育てしたい。厳しいかもしれない人生を一緒に乗り越えたい。」って思えるような人に出会うのが先じゃない?って。でも、もしも私が40歳で未婚だったら、洋子みたいに思うのかも知れないなぁとかね。


薪野も、既にこの時、前出の外的要因となるマネージャーと結婚していて、もうすぐ父になるという状態。洋子とこのマネージャーがひと悶着あるのですがそこはとばして。苦しかったスランプもようやく抜け出せたなという頃、ツアーでおとずれたNYで、シングルマザーとなった洋子と、父になった薪野は再会します。そこでおしまい。


私は、この二人にはヨリ戻して欲しくないなぁと思うんです。外的要因のせいだったとはいえ、二人は別れるという選択をした上、それぞれ他のパートナーを結婚相手として選ぶという選択をした。別れて、お互い結婚せずに再会したら全然違うけど、もうそれぞれに子供がいて、薪野には家庭がある。もう、お互いを選べない所に来てしまったと思う。二人はおそらく「運命の人」だったと思うんだけど、自分側の問題が未解決(薪野はスランプ、洋子はPTSD)だと、こういう判断も見失っちゃうんだなと。要は、自分の問題は、自分で解決しなきゃいけないし、それを先延ばしにしていると、人生の贈り物まで見えなくなってしまうのかな、というのが感想。とはいえ、こういう問題って自分では見えにくいもの。私も気をつけて、ちゃんと自分の心の様子を頻繁に伺ってあげないと、と思います。


こんな冷めた感じの感想しかないのが申し訳ないのですが笑 もう少し年を重ねたら読み直したい作品です。

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