Book series #12

久々に英語の本のBook seriesです。普段の読書は歴史小説(伝記や手記も含む)・小説が9割、ゆるめの専門書(主に美術史系)が1割というだいぶ偏った読み方をしているのですが(しかもほとんど新書ではない笑)、英語と日本語の割合はだいたい半々ぐらいです。


日本語の方が、圧倒的に早く読める(子供の頃、ハリポタなんかは出たその日に一気読みしてしまうような子でした)というのと、文章の美しさとか響きとかを楽しめるのですが、当然、英語の方が出版数は多いし、英語が原作のものはやはり英語で読みたいです。でも、どうしても英語だと情報収集モードになっちゃうんだよなぁ。遅いし。笑 

というわけで本の衝動買いは日本語のほうが断然多いのですが、この本は久々の英語の衝動買い。20世紀初頭のパリ、特にモンマルトルの様子をそこにいたアーティスト達の様子を中心に描いたバイオグラフィー(=伝記)です。伝記というと特定の人物にフォーカスしたものがほとんどですが、これは特定の「場所」にフォーカスしたもの。この時期のモンマルトルには有名になる前のピカソやマティス、ドラン、モディリアーニ等、美術史に名を残すアーティスト達が、貧乏共同生活をしながら目まぐるしく変わっていく時代の中、アートの新しいあり方、表現の仕方を模索していた時代。


史実に忠実な伝記ですが(参考文献のリストがものすごく長い!)とっても読みやすく、かつアーティスト達の生活感溢れる情景が目に浮かぶようで、サクサク読めました。ピカソはその表現スタイルがころころ変化していったのでも有名ですが、彼が囚人や貧困層を対象にした「青の時代」から、その頃にパリで流行りはじめたサーカスの人々などに焦点を当て始めた「バラ色の時代」、そこからどうやって「アヴィニョンの女たち」までつながっていったのか、いかに彼が日々の生活や、周りのアーティストから刺激を受けていたかというのがとても分かりやすく書かれていたのが良かった。


ピカソとマティスの話は特に平行して焦点を当てられていて、マティスは今となっては商業的にも成功したアーティストの印象が強いのですが、彼が自分の表現方法、色彩感覚にたどり着くまでどんな苦労をしたか、どんなふうに既存の概念を壊していったかなどが書かれていて、ピカソのような関わりづらい天才肌タイプではなく、話好きでオシャレなマティスがどうやって世間でアートの立ち位置を確立したかなども興味深かったです。


特に後半、ディアギレフがパリに持ってきたバレエ・リュス(ロシア発のバレエ)の影響、シルヴィアや火の鳥など、この頃に初演したバレエの話、衣装やセットデザインを担当したアーティスト達の話なども盛り込んであって、興味津々。そしてこの前行ったばかりのパリの街並みや聞き覚えのある地区、道の名前などが度々見かけられて、それも楽しかった理由のひとつかも。


同じ作者で、シュールレアリズムとモンパルナス地区にフォーカスしたIn Montparnasseも出版されているのでそちらも読んでみようかなー。ちなみにこういう西洋アートなノンフィクションと同時に、日本のSci-Fi小説(伊藤計劃の未完の作品を、円城塔が仕上げた、屍者の帝国)も読んでいるので、一体私の読書の趣味はどうなってるんでしょう笑

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